2024.7.19 更新
北陸ワイナリー巡りの旅(1)”情熱は伝播する”ドメーヌ・ボーin富山県南砺市~
はじめに
日本では、ほぼすべての都道府県にワイナリーがあり、全国でワイナリー数は500軒近いです。
日本を代表する伝統的なワイン産地として山梨県はよく知られているでしょう。
新しいワイン産地として北海道や長野県も注目されています。
こうした産地のワイナリー情報はメディアで取り上げられたり、自治体のサポートがあったりするため、それなりに目にする機会もあると思います。
“北陸のいいモノ・コトを発掘する”COREZOでは、北陸のワイナリーを紹介していきます。北陸といえば日本酒というイメージが強いかもしれませんね。
日本酒の酒造メーカーは確かに多いですが、オープンが予定されているワイナリーも含めると北陸3県(石川県、富山県、福井県)には10軒のワイナリーがあるのです。
第一回目は、富山県南砺市(なんとし)の小高い丘の上にある「ドメーヌ・ボー」を訪れました。
仏ブルゴーニュの「黄金の丘(コート・ドール)」構想
晴れた日、ドメーヌ・ボーからは日本海を見ることができます。
ワイナリーの立地が立野原(たてのがはら)という爽やかな風の吹く丘陵地にあるので、少し遠くにある日本海も見渡せるのです。
私が訪問した日は、風が心地よいものの真夏の炎天下でしたので、目の前に広がる畑は太陽の光を浴びて輝いていました。
緑の葉っぱと、まだ着色していない緑色のブドウの房、畝に咲くシロツメクサの可憐な白い花のコントラストがとてもきれいでした。
この丘陵地帯は秋になると一帯が黄金色になるそうです。
田んぼの稲穂が黄色になり、近くに広がる柿畑の柿の葉と柿も熟して黄色になり、そしてブドウの葉も黄金色に色づきます。
さながら、フランスワインの銘醸地であるブルゴーニュ地方の秋の風景をイメージできるきれいな風景になるそうです。
ブルゴーニュ地方にはコート・ドール(COTE D’OR 。Cote=丘陵地、or=黄金色)と呼ばれる場所があります。
ブドウの収穫後に色づいた葉っぱが美しい黄金色になる畑の様子に由来して付いた名前がコート・ドールだそうです。
ドメーヌ・ボーでは“コート・ドール構想”を立ち上げて、ワイン造りに取り組んでいます。
「立野原コート・ドール構想」という名前で、地域一体のブランド化や、インスタ映えのする統一されたイメージを形づくるということ、SDGsにも取り組む、といった複合的な構想です。
真夏のブドウ畑も美しいイメージでしたが、秋の黄金色に輝くワイナリーもインスタ映えするに違いありません。
さて、ブルゴーニュ地方のコート・ドールは素晴らしいワインを産出する地区として名高い場所で、白ワインはシャルドネ、赤ワインはピノ・ノワールが主に造られます。
ドメーヌ・ボーでも欧州系のブドウ品種が植えられていて、シャルドネやピノ・ノワールからワインが造られます。
ワイナリーとブドウ畑についてお話をお聞きしました。
情熱は伝播する
ドメーヌ・ボーの中山さんは「情熱は伝播する」と言い続けてきたと言います。
ワイナリーという夢を実現するために方々に情熱を注ぎこんだ結果、情熱は伝播して人も集まり、ワイナリー開業にこぎつけたそうです(詳しくは中山さんのご著書『ドアはいつでも開いていた』(中山安治著、2021年12月)をご覧ください。
面白いというと語弊があるかもしれませんが、情熱の強さは本書の冒頭からビシバシと伝わってきます・・・)。
ワイナリーについて、誤解を恐れずに一言でまとめるなら、設立からの歴史は浅いのですが、すでに幾つもの受賞ワインがあり、大躍進を続けているワイナリーです。
王道を進んでいるようにみえて、そうでもない寄り道もしている、そんな楽しいワイナリーです。
詳しくみていきましょう。
ワイナリー設立は2017年で、2019年に1万本の苗木を植え、ブドウ栽培が始まります。
2023年時点では、14ヘクタールの畑に4万本を超えるブドウの樹が植えられています。
ブドウ品種は全て欧州系の品種で、赤はカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワールなど7品種、白はシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリングなど6品種です。
ワイン好きには良く知られた品種ばかりです。
果樹は植えても実はすぐになりませんので、最初は買ったブドウで醸造が始まります。
1年めは1万6千本、2年めは3万本と、造られるワインの本数は順調に増え、4年めにあたる2023年の秋には5万本のワインが造られる予定です。
設立から数年という若いワイナリーなのですが、「サクラアワード」でダブルゴールドをはじめ4部門の受賞があり(2021年産のワイン)、「インターナショナルワインチャレンジ」(International Wine Challenge:略称IWCというイギリス・ロンドンで毎年開催されている世界最大規模のコンペティション)で銀賞や銅賞を受賞(2022年産のワイン)するなど、数多くの受賞歴があります。
2023年夏には「日本ワインコンクール2023」で金賞と銅賞を獲得しました。
醸造開始からまだ年月は浅いのに数々の受賞に輝くワインはどんな設備でつくられているのでしょうか。
面白い取り組み
見晴らしのよい小高い丘の上に建つきれいなワイナリーには、同じくらいピカピカの醸造設備が備わっていて、衛生管理は徹底されています。
欧州から輸入された醸造機器やステンレスのタンクは、新型コロナウイルスが世界に蔓延する直前の、2020年の年初に届いたそうです。
もう少し遅かったら、日本までたどり着けなかったかもしれず、収穫の季節に稼働させることは難しかっただろう、とのことです。
受賞ワインの数々も含め、いろいろなラッキーが重なっているとのことでした。
欧州系のブドウ品種ですので、樽で熟成されているワインもあります。
樽はフランス産とアメリカ産の両方が使われています。
どんなワインになるのか楽しみだなと思いました。
ワインの質は受賞ワインの数々が証明していますが、ドメーヌ・ボーに来たら是非試してほしいのが欧州系品種でつくられたブドウジュースです。
シャルドネのジュース、メルローのジュースがあります。
シャルドネもメルローも人気の醸造用ブドウ品種ですから、そこからジュースをつくっているワイナリーは日本だけでなく、世界でも珍しいと思います。
一口飲むと、その甘さと美味しさにびっくりするに違いありません。
珍しいといえば、もうひとつあります。
黒ブドウのピノ・ノワールから造られる白ワインです。
赤ワイン用のブドウ品種の果皮は紫色や黒色ですが、中の果肉は白っぽい色合いをしていますので、黒ブドウを収穫してそのまま絞り、果汁をアルコール発酵させれば赤色にはならず、白っぽいワインになるのです。
ピノ・ノワールの白ワインも、このワイナリーならではの面白い取り組みです。
私が飲んだピノ・ノワールの白ワインはメロンや桃のような香りのする辛口ワインで、酸味が感じられる一本でした。
おわりに
訪問した時期は夏でしたが、小高い丘からの眺めも素晴らしく、ドメーヌ・ボーは春夏秋冬いつ訪問しても美しいワイナリーだろうと思います。
アクセスは、電車なら城端駅からタクシーで10分ほどの距離、車なら福光ICから7分のところにあります。
数年以内にキャンプ場やグランピング施設が近くにでき、ボルダリングなども楽しめるようになると聞いています。
ワイナリーで試飲を楽しみ、近隣でいろいろなアクティビティも楽しみ、グランピング施設で自然を満喫するという週末もいいですね。
基本情報
-
営業時間
10:00~16:00
-
定休日
毎週火曜
冬季(1月~2月)は毎週火曜日~木曜日(祝日は営業いたします。)
年末年始
その他(ホームページ等でお知らせいたします) -
お問い合わせ先
ドメーヌボー
0763-77-4639
[email protected]
-
公式サイト ※外部サイトに遷移します
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住所
富山県南砺市立野原西(コート・ドール)1197番地
-
アクセス
東海北陸自動車道 福光ICより車で7分
JR城端線 城端駅よりタクシーにて10分
\ この記事を書いた人 /
原田 喜美枝
ワイン好きな大学教員
日本ソムリエ協会ワインエキスパート、Vinltaly Quality Wine Hero『日本ワインの未来(英語版はThe Future of Japan Wine)』(Youtube動画監修)バイリンガル書籍『Wines of japan』(イカロス出版)の共著者。
\ この記事を書いた人 /
原田 喜美枝
ワイン好きな大学教員
日本ソムリエ協会ワインエキスパート、Vinltaly Quality Wine Hero『日本ワインの未来(英語版はThe Future of Japan Wine)』(Youtube動画監修)バイリンガル書籍『Wines of japan』(イカロス出版)の共著者。
※掲載されている情報は、時間の経過により実際と異なる場合があります。
記事作成者:COREZO
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